-精神科コラム- 2024年8月

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統合失調症とは?- 2024年8月1日-

統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。
約100 人に1 人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気です。
薬や精神科リハビリテーションなどの治療によって回復することができます。

【どんな症状】

-陽性症状-

妄想
「テレビで自分のことが話題になっている」「ずっと監視されている」など、実際にはないことを強く確信する。

幻覚
周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたり(幻聴)、ないはずのものが見えたり(幻視)して、それを現実的な感覚として知覚する。

思考障害
思考が混乱し、考え方に一貫性がなくなる。会話に脈絡がなくなり、何を話しているのかわからなくなることもある。

-陰性症状-

感情の平板化(感情鈍麻)
喜怒哀楽の表現が乏しくなり、他者の感情表現に共感することも少なくなる。

思考の貧困
会話で比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。

意欲の欠如
自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまう。また、いったん始めた行動を続けるのが難しくなる。

自閉(社会的引きこもり)
自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションをとらなくなる。

-認知機能障害-
記憶力の低下
物事を覚えるのに時間がかかるようになる。

注意・集中力の低下
目の前の仕事や勉強に集中したり、考えをまとめたりすることができなくなる。

判断力の低下
物事に優先順位をつけてやるべきことを判断したり、計画を立てたりすることができなくなる。

【薬物療法/精神科リハビリテーションについて】
統合失調症の代表的な治療として、薬による治療と精神科リハビリテーションがあります。
急性期には薬による治療が基本になりますが、なるべく早い時期から薬と精神科リハビリテーションを組み合わせた治療を行うことが効果的です。

【困ったときの相談窓口】
困ったときの相談は、かかりつけの医療機関のほかに、最寄りの保健所、精神保健福祉センターでも受け付けています。 ご本人だけでなく、ご家族の方も直接、窓口で相談できるほか、電話での相談も受け付けています。

-こころの健康相談統一ダイヤル-
電話をかけた所在地の精神保健福祉センターをはじめとする公的な相談機関につながります。ただし、電話相談の受付時間や曜日は、相談先によって異なります。
Tel0570-064-556

-公益社団法人全国精神保健福祉会連合会 みんなねっと相談室-
病気のことや経済的な悩み、生活上の問題、障害年金等の福祉制度に関する質問などを含め、同じ家族の立場の家族相談員が本音の相談に応じます。
Tel03-5941-6346
毎週水曜日 10:00-12:00、13:00-15:00

統合失調症の治療とは?-2024年8月8日-

【抗精神病薬】

統合失調症の治療の中心となる薬を「抗精神病薬」といい、症状の改善や再発の予防に大きな力を発揮します。抗精神病薬は、主として脳内で過剰に活動しているドーパミン神経の活動を抑えることで症状を改善すると考えられています。抗精神病薬は、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)とに分けられます。定型抗精神病薬は陽性症状に効果があり、非定型抗精神病薬は陽性症状に加えて陰性症状や認知機能障害に対する効果も期待できます。

【その他の薬】
抗精神病薬のほかに症状に合わせて、不安や抑うつを和らげる薬、睡眠薬などが使われます。また、抗精神病薬の副作用を抑えるための薬が処方される場合もあります。
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副作用かな? と思ったら-
時として体が硬くなったように感じたり、手足がふるえたり、落ち着きがなくなる人も中にはいます。また、のどが渇いたり、便秘になったりする人もいます。
これらは薬の副作用の場合がありますので、少しでも「おかしいな」と感じたら主治医に相談しましょう。薬の量を調整したり、種類や組み合わせを変えることで、副作用を抑えることが可能です。

-服薬をやめてもいいですか?-

薬を飲むことをやめると、再び症状が出てくることがあります。また、再発を繰り返すと症状が強くなり、治りにくくなります。薬には再発を予防する作用がありますから、薬を続けることはとても重要です。
症状が良くなったからといって、勝手に自分で薬をやめてはいけません。毎日薬を飲むのが面倒であれば、1 回の投与で2~4週間効果が続く持続性注射剤を選ぶこともできます。薬を飲むことをやめる、薬の量を減らすなどについては、主治医とよく相談して決めましょう。

【精神科リハビリテーション】
精神科リハビリテーションは、病気の症状で生じる「生活のしづらさ」を改善し、スムーズに安定した生活を送れるようにすることを目的に行います。具体的には、デイケア、作業療法、SST(生活技能訓練)、心理教育などのプログラムがあり、医療機関や地域の精神保健福祉センター、自立訓練事業所などで実施されています。
精神科リハビリテーションは医師や看護師のほか、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士などの専門職が連携して行います。自分に合った無理のないリハビリテーション・スケジュールについて、これらの専門スタッフに相談してみましょう。

-デイケア-
医療機関で実施される外来治療の一つで、SST や心理教育、レクリエーション、軽作業、料理などのさまざまな活動を通じて対人関係能力を改善し、社会にうまく参加できるように準備するプログラムです。「症状は良くなったけれど社会に出る自信がない」「友達が欲しい」などの悩みがある場合は、デイケアに参加するとよいでしょう。定期的に通うことで規則正しい生活リズムも身につきます。保健所や精神保健福祉センターでも実施されています。

-作業療法-
作業療法士の指導のもと、手工芸、パソコン、体操、園芸、音楽、書道、スポーツなどの軽作業を通じて、楽しみや達成感、充実感といった感情の回復を図ります。これにより、日常生活や社会参加に必要な能力の回復・維持が期待できます。

-心理教育-
病気の症状や原因、治療法などについて正しい知識を学ぶことで、病気に対する理解を深め、病気との付き合い方や前向きに治療に取り組む姿勢を身につけることができます。
家族を対象にした心理教育は「家族教室」と呼ばれ、病気に対する理解と本人への接し方やサポート方法などを学びます。

【再発しやすい病気です】

統合失調症は再発しやすい病気です。いったん症状が落ち着いても長期にわたって治療を続ける必要があります。 治療を中断して再発を繰り返すと、次のようなリスクがあります。

-再発を繰り返すと生じるリスク-

  • 精神機能や社会的な機能が低下して、今までできていたことができなくなる
  • 薬が効きにくくなって回復に時間がかかるようになる
  • 多くの方が再入院になる


【再発のサインを見逃さない】
再発の兆候(サイン)は人それぞれ違いますが、患者さん一人に限っていえば、再発するときはいつも同じパターンで始まることが多いといわれています。家族が気づきやすい再発のサインには次のようなものがあります。

-家族がわかる再発のサイン(例)-

  • 眠れない日が続くようになる
  • イライラしている
  • 食欲が落ちている
  • 焦りや不安の訴えが多くなる
  • 発病時の体験を昨日のことのように語るようになる
  • そわそわして、落ち着きがなくなる
  • うつ症状になり、ぼーっと考え込んだりする
  • 被害的で、疑い深くなる
  • 行動的になり、異性にアタックしたり、仕事にトライする
  • 作業所やデイケアを突然やめて、仕事探しに出る

 

病気の症状が安定してきたら、治療を続けながら働くことも可能です。病気の人を対象にした「障害者枠」のほか、「一般就労」で働いている人たちもたくさんいらっしゃいます。

仕事を探している方への求職情報の提供だけでなく、仕事につく自信がない方や仕事を続けられるか不安な方を対象として職業準備訓練や職場実習、就職後の定着支援をおこなう施設もあります。また、落ち着いて仕事を続けていく上で必要な生活面での支援もしてくれます。

まずは主治医に希望を伝えて、これらの施設の専門スタッフに相談してみましょう。

気分変調症とは?-2024年8月15日-

1.気分変調症について

気分変調症はうつ病と似ている疾患で、気分が異常に低下してしまう疾患の1つです。

気分変調症の症状は、「軽度のうつ症状が長期間続く」というのが特徴です。

軽度というのは、「日常生活にギリギリ支障を来たさないくらい」と考えると分かりやすいと思います。気分が晴れない日が続いていてそれなりに苦しいんだけど、仕事に行ったり身の回りの事をしたりとかは何とか出来ている。

軽度とは、このような状態です。

また、「長期間」というのは数年単位の期間になります。診断基準上は「2年以上(未成年は1年以上)」となっています。しかも気分変調症で生じる症状は、基本的にはうつ病で生じる症状と共通しています。

具体的には、

  • 抑うつ気分(気分の落ち込み)
  • 食欲の異常(多くは食欲低下)
  • 睡眠の異常(多くは不眠)
  • 疲労感、気力の低下
  • 自尊心(自分を大切だと思える気持ち)の低下
  • 集中力の低下
  • 絶望感

などのうつ症状が認められます。

それぞれの症状は決して重篤ではないものの、1日のほとんどの時間に認められ、また数年単位でこれらの症状が持続しているのが気分変調症です。

しばしば気分変調症は、症状が軽度である事から「大したことない疾患」と誤解されてしまう事がありますが、そんな事はありません。

症状自体が軽度であったとしても、人生に大きな不利益を与える可能性の高い疾患である事が分かると思います。気分変調症の症状は確かに軽いのですが、だからといって軽視して良い疾患ではないのです。

2.気分変調症とうつ病の症状の違い

まず、気分変調症のそれぞれの症状の程度はうつ病と比べると軽く、生活に大きな支障をきたすほどにはならないのが通常です。しかしうつ病であっても「軽症うつ病」は日常生活に大きな支障を来たさない程度の重症度ですので、症状の程度だけではうつ病と気分変調症を見分ける事はできません。

「軽度」という以外に両者を見分けるポイントとしては、うつ病は気分が異常に落ち込み、正常に自分の状況を判断できなくなってしまうため「希死念慮」がしばしば認められます。希死念慮というのは「自分は生きている価値がない」「自分が存在している事が世の中に迷惑だ」と異常に状況を認知してしまう事で生じる「死ななくてはいけない」という思いです。

気分変調症も、同じように気分の異常な落ち込みはあるものの、生活は何とか保てるため、状況を判断する能力はそこまで低下していません。そのため、「死んでしまいたいな」「消えてしまいたいな」という自殺願望が認められる事はありますが、異常な状況認知に基づく「希死念慮」が認められることはあまりありません。

両者を見分けるにあたってもう1つのポイントは、「長期間続いている事」とそれによって「いつから発症したのかが分かりにくい」という点があります。

うつ病も長期間続く事はありますが、気分変調症は「いつからこのような落ち込みがあるのか分からない」と患者さん自身が言うほど経過は長く、発症時期を特定する事が困難です。さらに本人は今の精神状態を異常なものだとは考えていないため、そもそも治療をしようと病院に来ない事も珍しくありません。

3.気分変調症の各症状について

気分変調症で生じやすい症状について、詳しく説明します。

抑うつ気分
気分変調症の抑うつ気分は、その程度はひどくはないものの、1日中続きます。また何年も続く事が特徴です。
うつ病では「日内変動」といって朝にもっとも悪く、夕方になってくると少しずつ改善してくるという特徴がありますが、気分変調症は日内変動はありません。1日を通して持続的に落ち込みます。

食欲の異常
基本的には気分が落ちるため、食欲も低下するのが一般的です。うつ病であれば食事が全く取れずに体重がどんどんと落ちてしまう事もありますが、気分変調症の場合は食欲は低下するものの、生活に必要な体力は何とか維持できる程度にとどまります。

疲労感、気力の低下
気分変調症では精神的なエネルギーが低下しているため、「何もやる気になれない」「おっくうでなかなか腰が上がらない」「常に疲れている」という症状が生じます。

全く動けないという程度にはならず、生活に必要な最低限の行動は出来るものの、それ以上の行動は出来ないという程度が多く、

  • ノルマの最低限の仕事は出来るけど、それ以上は出来ない
  • 最低限の家事しかやる事が出来ない

という状態が続きます。

自尊心の低下
自分に対する評価も低下します。本来、私たち人間は皆「自尊心」を持っています。これは自分を大切だと思える気持ちです。この自尊心があるからこそ、私たちは人生に希望を持って生きていく事が出来ているのです。
しかし精神エネルギーが低下し、気分が落ち込んでいる気分変調症では、何事もネガティブな方向に考えやすくなるため自尊心・自己評価が低下しやすい傾向があります。

 

集中力の低下
物事に集中する事は、精神力が必要です。精神エネルギーが低下してしまっている気分変調症では、気力が低下しているため、物事に集中する事が困難になります。そのため仕事中なのにボーッとしてしまったり、ミスが多くなってしまったリという事が目立ってくるようになります。

絶望感
気分変調症では、抑うつ気分が長期間続く事に加えて自尊心の低下も生じるため、自分の将来に対して絶望感を感じるようになります。
この絶望感は、「死んでしまいたい」「この世から消えてしまいたい」といった自殺願望を引き起こす事もあります。

くすりの飲み方Q&A- 2024年8月25日-

Q:薬の袋に食前、食後など書いてありますが、どれくらいのタイミングで服用すればよいですか?

A:以下のように服用してください。

・ 食前:食事の30分くらい前に服用。
・ 食直前:食事をする直前に服用。
・ 食後:食事の後の30分くらいまでに服用。
・ 食直後:食事を終えた直後に服用。
・ 食間:前の食事から約2時間程度過ぎてから服用。
・ 起床時:朝、起きてすぐに服用。
・ 眠前:寝る直前に服用。 飲んだらすぐに床に就くようにしましょう。
・ 頓服:症状が出たときに必要に応じて服用。

 

Q:服用時間に注意しなければならない薬はありますか?

A:当センターでは以下の薬に特に注意してください。

シクレスト(抗精神病薬)
必ず舌の下に薬をおいてください。すぐに溶けます。

胃の中に入ると、肝臓の初回通過効果でシクレストの効果が2%程度まで落ちてしまうと言われております。

クアゼパム(睡眠薬)
胃の中に食物がある状態で服用すると、薬が効き過ぎてしまう事があります。服用後は夜食を摂らないでください。

頓服薬を服用してもすぐに効果が出なかったら、時間をあけずにもう一回服用してもいいですか?

A:すぐに服用せず、2時間程度を開けるようにしてください。

一般的な薬は服用してすぐに効果が出るわけではなく、効果が出てくるまでに少し時間がかかります。ですから、服用後、少し様子を見るようにしてください。

うつ病とうつ状態の違いについて- 2024年8月29日-

うつ病、抑うつ状態、うつ状態、うつ、抑うつなど、うつ病に関する言葉はたくさん存在しています。こういった言葉に明確な基準はありませんが、ある程度気分の落ち込みや憂鬱な気分が続いた状態を「抑うつ状態」と表現します。つまり、抑うつ状態やうつ状態は、気分の落ち込みが一時的な場合にあてはまります。

一方でうつ病は、抑うつ状態よりも症状が重い場合や期間が長い場合にあてはまります。抑うつ状態が長く続き、生活に支障が出て苦痛が強い場合は、うつ病と診断が下ります。 ただし、先述したようにうつ病とうつ状態の言葉に明確な基準はありません。

参考:日本医師会|うつ病・抑うつ状態と、うつの違いってなぁに?

https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/454.pdf


【うつ病=うつ状態ではありません】

うつ状態に陥ると、大抵の人は真っ先にうつ病を疑うが、うつ状態=うつ病ではない。長期間に及ぶうつ状態をきたす疾患というのは、うつ病以外にも適応障害、パーソナリティ障害、発達障害、統合失調症などがあります。

適応障害は、軽度のうつ状態で「心の風邪」とも言われます。過度のストレスによるもので、薬の力を借りずともストレスの原因が改善されたり、時間がたったりすることで自然に治っていくケースも多いです。統合失調症は、外に出て騒ぐなどの行動がある『陽性症状』と、ひきこもりがちになる『陰性症状』があります。うつ病でも自分の行為や内面的な心の動きに罪悪感をもち、自分自身を責める『罪業妄想』などの妄想を伴うことがあります。統合失調症では、他人の些細な言動や行動に特別な意味づけをし、勝手に自分に関連付ける『関係妄想』など、タイプの異なる妄想がみられます。

 

【うつかな・・・と思ったら・・・】

身近な人に現状を伝えて相談する

「病院に行くことに抵抗がある」「あまり大げさにしたくない」というときは、まず身近な人に相談することからはじめましょう。軽度の抑うつ状態であれば、相談することで心が晴れたり対策法が見えてきたりして問題が解決する可能性があります。 とくに、真面目で頑張りすぎる性格の人はうつ病になりやすいと言われています。「これくらいでうつ病なわけがない」と思いこんでしまう傾向にあるので、周囲に相談して客観的な判断をしてもらうことが大切です。

「自己判断せず、必ず医師に相談して的確な判断を下してもらいましょう。」

うつ病の正確な診断をするためには、一人ひとりの様子やほかに悩んでいる症状などを複合的に見て判断する必要があるためです。

自己判断で「これくらいの抑うつ状態は病気じゃない」と思ってしまったり、「うつ病だから会社を辞めよう」と行動したりしてしまえば、症状の悪化や大きな後悔につながってしまう恐れがあります。医師に相談することで客観的な判断が可能となり、薬物療法や休職、これからの過ごし方など適切な治療の方向性が見えてきます。

精神科や心療内科に通院することに抵抗がある場合は、かかりつけの内科などで相談しても構いません。症状の早期改善には医師の診断が欠かせないので、できるだけ早めに診察を受けるようにしましょう。

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