-精神科コラム- 2024年12月

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冬場のメンタルヘルス -2024年12月23日-

セルフメンタルヘルスの第一歩は、自分の状態に気づき、認識することです。
自分の感情や思考、体調の変化に敏感になり、それを理解することが、心の健康を保つための重要な基盤となります。
それを基に、自分に合った方法でリラックスしたり、ストレスを管理したり、自己肯定感を高めていくことが、心の健康を保つために大切なプロセスとなります。

1. 自己認識を高める

自分の感情や思考に対して意識的に注意を向けることが大切です。日々の中でどんな時にストレスを感じるのか、どんなことが自分を幸せにするのかを振り返り、感情の波を知ることが第一歩です。これには、以下の方法があります。

  • 感情を記録する: 日々感じたことを簡単にメモしたり、日記をつけることで、自分の感情の動きに気づきやすくなります。
  • 思考のパターンを確認する: ネガティブな思考や自分に対する批判的な考えが多いと感じた場合、それに気づいて自分を見つめ直すきっかけとなります。

2. 自分の限界を理解する

自分がどれだけのことをこなせるか、またはどれだけの負荷をかけているかを理解することも大切です。過度に無理をしていると、ストレスが溜まり、心の健康に影響を与えることがあります。

  • 休息を意識する: 自分に休息が必要だと感じたとき、無理をせずに休むことを選択できることが重要です。過労や疲れが心に影響を与えるため、適切なタイミングでリセットすることが大切です。

3. 感情の表現を大切にする

自分の感情を押し込めることなく、適切な方法で表現することがセルフケアの第一歩です。感情を言葉にすることは、心の整理を助け、ストレスを軽減する手段となります。

  • 信頼できる人と話す: 自分の感情や悩みを友人や家族と話すことで、共感を得たり、気持ちを整理することができます。
  • 創造的な表現をする: 絵を描く、音楽を聴く、日記を書くなど、感情を表現する方法を見つけることも有効です。

4. ポジティブな自己対話を意識する

自分に対する内面的な言葉が、心の健康に大きな影響を与えます。自己批判が強いと、ストレスや不安が増すことがあります。自分を励ます言葉を使うように意識することが大切です。

  • 自己肯定感を高める: 自分が達成したことや、うまくいったことを振り返り、自分を褒めることが自信を育て、心の健康を保つ助けになります。

5. ストレス管理を学ぶ

心の状態に気づいた後、次に重要なのは、どのようにストレスに対処するかを学ぶことです。自分がストレスを感じる場面や状況を特定し、その対処法を準備しておくことが効果的です。

  • リラックス法を取り入れる: 深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラックス法を学び、日常に取り入れることで、ストレスを軽減することができます。

さらに冬場は・・・冬場は日照時間が短く、気温が低いため、心身にさまざまな影響を与えることがあります。
特に「冬季うつ病(季節性情動障害)」など、季節の変わり目に関わる心の問題が現れやすい時期です。
セルフメンタルヘルスを保つためには、以下の方法を取り入れてみることが効果的です。

1. 日光を浴びる

冬場は日照時間が短くなるため、気分が沈みやすくなります。可能な限り、朝や昼の時間帯に外に出て、太陽の光を浴びるようにしましょう。自然光はセロトニンの分泌を促進し、気分の安定に役立ちます。

2. 適度な運動をする

寒い季節でも、体を動かすことは心の健康に非常に有益です。ウォーキングやストレッチ、ヨガなどを取り入れることで、血行が良くなり、ストレス解消にもつながります。室内でできる軽いエクササイズも効果的です。

3. 十分な睡眠をとる

冬は寒さや暗さが影響し、睡眠の質が低下することがあります。規則正しい睡眠時間を確保し、リラックスした環境で眠ることが心身の回復に大切です。快適な寝具や寝室の温度調整を意識しましょう。

4. バランスの取れた食事を摂る

冬は食べ物が豊富な季節ですが、脂肪分や糖分の高い食事は気分の不安定さを引き起こすことがあります。新鮮な野菜や果物、穀物を多く取り入れ、ビタミンDを含む食品(魚や卵、キノコなど)も意識的に摂ると良いです。

5. 自分を大切にする時間を持つ

冬はどうしても外出が減りがちで、孤独感を感じることがあります。そのため、趣味やリラックスできる時間を意識的に作り、自分をいたわることが大切です。読書や映画鑑賞、アートやクラフトに触れるなど、心が安らぐ活動をしましょう。

6. ストレス管理とリラックス法

冬の寒さや忙しさでストレスが溜まりやすくなります。瞑想や深呼吸法、マインドフルネスの練習はストレスを軽減する効果があります。また、趣味やリラックスできることに意識的に時間を割くことで、気持ちをリフレッシュできます。

7. 友人や家族とのつながりを大切にする

冬の季節は孤立しやすい時期でもありますが、友人や家族とのつながりを大切にし、気軽にコミュニケーションを取ることが心の健康に役立ちます。電話やビデオ通話でつながるだけでも、安心感を得られることがあります。

これらの方法を取り入れ、自分のペースでメンタルヘルスを維持できるよう工夫していきましょう。

マタニティブルー -2024年12月15日-

妊婦さんの心配の一つに、マタニティブルーがあります。

「妊娠や出産を喜べなかったり赤ちゃんを見ても幸せを感じられなかったら、どうしよう」「子育てがきちんとできなくなったらどうしよう」などと思ってしまうかもしれません。
マタニティブルーとは、妊娠中や出産後に生じる「一過性の情緒不安定な状態」をいいます。主な症状は軽度の抑うつ、涙もろさ、不安、集中力の低下です 。一過性ではなく治療が必要なうつ病とは異なります。

妊娠・出産は人生の一大事であり、前後で生活が大きく変化します。また、妊娠・出産の負荷によって心身も大きく疲弊するでしょう。このような状況のなかで「心の混乱」が生じるのはめずらしくありません。日本では、約3050パーセントの妊産婦がマタニティブルーを経験するとされます 。

マタニティブルーは、妊娠中なら妊娠初期から妊娠中期、出産後なら早期に起こりやすいとされます。多くの場合、期間は2週間程度の一過性です。ただし、発症時期や期間には個人差があります。
妊娠中のマタニティブルーは、妊娠に伴うホルモンバランスの変化、ひどいつわりや食欲不振、体型の変化、思うように体が動かない心理的ストレス、出産に対する不安、将来に対する不安などが要因になります。抑うつが重度になると、治療が必要な「妊娠期うつ病」に移行するおそれがあるため注意しましょう。

出産後のマタニティブルーは、産後310日ごろに発生し、通常は2週間ほどで消失するとされています。体内のエストロゲン量やプロゲステロン量が急激に低下し、生活や環境の変化、育児の疲労などに直面するためです。

【マタニティブルーの主な症状】

軽度の抑うつ、涙もろさ、不安、集中力の低下です。特に「涙もろさ」は特徴的で、重要なサインとされます 。

《メンタル面の不調》

·                     気分が落ち込む

·                     急に泣きたくなる、涙が出る

·                     情緒が不安定になる

·                     強い恐怖心や不安感をいだく

·                     イライラする


《身体面の不調》

·                     不眠

·                     食欲不振

·                     過食

·                     動悸

症状は、通常2週間ほどで治まり、特に治療を必要としないことが多いです。非常につらく苦しい状態ですが、通り雨のようなものと考え、心と体を休めて通り過ぎるのを待ちましょう。

【原因】

        女性ホルモンの変動

マタニティブルーの主な原因の一つは、産前・産後の急激なホルモンバランスの変化と考えられています。特に出産直後の変動は大きく、妊娠中にエストロゲンとプロゲステロンを大量に分泌していた胎盤が排出されるため、体内のエストロゲン量とプロゲステロン量が大きく低下し、ほぼゼロになるのです。

このような急激なホルモンバランスの変化が自律神経のはたらきに影響をもたらし、精神的な不安定さを中心とした心身のさまざまな症状を引きおこすと考えられています。

        心理的ストレス

心理的ストレスも、マタニティブルーの原因の一つと考えられています。初めて妊娠・出産を経験した女性や、もともと精神的な不調を抱えていた女性、周囲のサポートが少ない女性、夫婦関係などの家族関係に問題を抱えた女性に、マタニティブルーの発生が多いためです。

妊娠・出産により生活は大きく変わります。思うように外出ができず、行動が制限されることも多くあります。育児や将来に対する不安もあるでしょう。大きいおなかや生まれたばかりの赤ちゃんを目にして、母親としての責任にプレッシャーを感じるかもしれません。産後の体の変化への受容も必要です。

これらのさまざまな要因が心理的ストレスとなって、マタニティブルーの発生に関与するとされています。

        体力の低下や睡眠不足

妊娠中の疲労、出産による体力の低下、授乳や育児による疲労や睡眠不足などもマタニティブルーの発生に影響すると考えられています。

【対処法】

  誰かに話す

不安や悩み、悲しい気持ち、つらい気持ちを一人で抱えず、家族や友人、先輩ママ、医師や助産師、保健師などに積極的に話しましょう。話がまとまらなくてもよいので、現在の気持ちを言語化し、感情を表に出すことが大切です。ママ向けのイベントや病院や産院で行われている母親学級へ参加したり、お住まいの自治体が行っている妊産婦向け相談窓口・電話相談などのサービスや民間で行っているサービスを調べて利用するのもよいでしょう。

マタニティブルーになりやすい人には、責任感が強い、完璧主義、我慢強い、一人で抱え込みやすい、感情を表出するのが苦手などの傾向がみられます。「話しても何にもならない」「相手に負担」「迷惑をかけてしまう」などと思わずに話していきましょう。

  ゆっくり休む

マタニティブルーに限らず、精神的な不調の際は十分な休養が必要です。パートナーや家族の協力を得て、ゆっくりと休みましょう。十分寝ることも大切です。また、仕事を休んだり家事を家族に任せたり、赤ちゃんを預けたりして、自分のためだけの時間をつくるとよいでしょう。外出して気分転換をはかることも重要です。頼れる家族がいない場合は、お住まいの自治体の助産師や保健師、またはかかりつけの病院に相談し、受けられるサービスがあるかなどの情報を積極的に得ていきましょう。

  軽く運動をする

負担にならない程度の軽い運動を行ってみましょう。運動は自律神経を整え、ストレスを解消します。また、脳内のセロトニンの分泌量が増えて心に安らぎをもたらす効果もあるのです。

ウォーキングなどで外の新鮮な空気を吸えば、気持ちのリフレッシュにつながるでしょう。外に出るのが難しければ、室内でできるマタニティヨガやピラティスなどもおすすめです。

【まとめ】
マタニティブルーは多くの場合、一過性のものです。しかし前述のとおり、重症化して産後うつ病などの精神疾患に移行する例もあるため、注意が必要です。


「母親」という言葉は、今でも大きな重みを持ちます。「母親なら〇〇して当然」、そんな言葉も耳にするでしょう。しかし、子育てはママが健康であってこそできるもの。子どものためと思って、積極的に周囲の理解や助けを求めてください。パートナーや両親、きょうだい、友人、近所の先輩ママ、医療機関や行政の相談窓口でもよいでしょう。

今後も子育てのために周囲のサポートが必要な場面が何度もあります。そのための環境づくりと考えて、気軽に周囲の力を借りてください。

続発性不眠症 -2024年12月9日-

続発性不眠症は、他の病気や状態が原因で引き起こされる不眠症の一種です。一般的な不眠症は、特に原因が明確でない場合を指しますが、続発性不眠症は何らかの別の身体的または精神的な疾患や状況によって引き起こされます。
例えば、慢性的な痛み、呼吸器系の疾患(喘息や睡眠時無呼吸症候群など)、消化器系の問題(胃食道逆流症など)、うつ病や不安障害、薬物の副作用、またはアルコールやカフェインの過剰摂取などが原因となります。


続発性不眠症の原因

続発性不眠症は、さまざまな医学的問題が根本的な原因となることが多いです。
例えば、うつ病や不安症は不眠症を引き起こす最も一般的な精神的な原因です。
これらの精神的な問題では、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりすることがよくあります。また、痛みを伴う慢性疾患(例えば関節炎や腰痛)や呼吸器系の問題(例えば喘息や睡眠時無呼吸症候群)は、睡眠を妨げる原因となることがあります。薬物治療の影響やアルコール依存症、カフェインの摂取過多も不眠症を引き起こす可能性があります。

症状
続発性不眠症の症状は、主に睡眠の質や量の低下として現れます。寝つきが悪くなる、途中で何度も目を覚ます、または早朝に目が覚めて再び眠れなくなるといった症状が見られます。また、睡眠が浅いため、日中の眠気や疲労感が続き、集中力や記憶力の低下が起こることもあります。加えて、精神的な問題が影響している場合、気分の落ち込みや不安感が強くなることがあります。


診断と治療

続発性不眠症の診断には、まず基礎疾患の有無を確認することが重要です。医師は、症状の経過や生活習慣、他の病歴を詳細に聞き取り、必要に応じて検査を行います。治療は原因に応じて異なります。
例えば、うつ病が原因の場合は抗うつ薬や認知行動療法(CBT-I)が有効とされています。慢性疼痛が原因の場合は、痛みの管理を行うことが必要です。また、睡眠衛生を改善することや、薬物療法(睡眠薬)の使用も一部の場合で考慮されます。
ただし、睡眠薬は長期的に使用すると依存症になる可能性があるため、短期間での使用が推奨されます。

予防と生活改善

続発性不眠症を予防するためには、生活習慣を改善することが大切です。規則正しい睡眠時間を守る、寝室の環境を整える(暗く静かな環境を作る)、アルコールやカフェインを避ける、そして寝る前のリラックスする時間を持つことが推奨されます。また、ストレス管理を行うことで精神的な健康も保ちやすくなります。

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