不眠症には、①狭義の不眠症と、②他の病気の症状としての不眠など、原因がはっきりしているものがあります。前者は原発性不眠症、後者は続発性不眠症とか二次性不眠症と言われます。また、うつ病や統合失調症などの精神疾患による不眠がその代表で、また薬物の影響として不眠が見られる場合もあります。
③「不眠症」には分類されませんが、睡眠障害として1日24時間のリズムがうまく取れず、結果として望ましい時間に眠ること・起きることができない病気もあります。その他睡眠時無呼吸症候群なども一般に知られるようになってきました。これらも「不眠症」とは呼びませんが重要な睡眠のトラブルです。
若い人の睡眠の悩みは大抵②か③であり、残念ながらこれらは医療の手助けが必要です。
さて睡眠についてはいくつかの誤解があります。
l 8時間眠るのが望ましい
l 早寝早起きが大切である
l 寝床に横たわっているだけでも睡眠と同じような効果がある
いずれも間違いです。年齢とともに睡眠時間はだんだん短くなってゆくものであり、60歳代では平均6時間ちょっと、70代ではそれ以下です。日中、眠気のために活動が障害されるということが大事になります。
また夜、することもないと「早寝早起きが良い」とばかりに早く床に就こうとします。齢をとると早く眠くはなるのですが、あまり早く寝てしまうと深夜に起きてしまいます。そこで、もう眠れないからと睡眠薬を求める方もいます。
3つ目の、横になっているだけでも睡眠と同じ効果がある、という誤解のために、長く床に入っています。すると横になっていながら覚醒している時間が長くなり、不眠への不安がますます強くなりがちです。その時浅いレベルの睡眠があると、翌日の睡眠に影響します。「床上時間」と「睡眠時間」はできるだけ差がない方がよいのです。
ですから、眠れない人の睡眠のコツは「遅寝・早起き」です。どうせ眠れないなら眠くなるまで床に就かない、目が覚めたら起き上がる。これが翌日以降の睡眠をよくしてくれます。「遅くに寝なさい」というと「その時間まで何をして過ごせばよいのですか!?」と不満げな方も多いのですが、これは生活習慣ですからやがて慣れてゆきます。
他に睡眠に良いことは、朝、日の光を浴びること。これによって夜に睡眠誘発物質が体から分泌されます。
案外大切なのはお風呂です。体温が下がってくる頃に眠くなりますので、夜ゆっくりお風呂に入り一旦体温を上げることは大切です(寝る直前ではありません)。それでもダメなときには医療にかかることになりますが、病院に行く前に以上のことはやってみる価値があります。
最後に厚生労働省から「睡眠障害に対する12の指針」も紹介します。
健康づくりのための睡眠指針2014 ~睡眠12箇条~
1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。
ぜひ、やってみて、快眠を得ましょう。