オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンという神経伝達物質の働きをブロックする薬です。オレキシンは、睡眠と覚醒を調節する役割を果たしており、特に覚醒状態を促進する作用があります。このため、オレキシン受容体拮抗薬は、睡眠障害、特に不眠症の治療に使用されることがあります。
主な作用
オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンが結びつくオレキシン受容体(オレキシン1受容体とオレキシン2受容体)をブロックします。これにより、オレキシンの覚醒を促進する作用が抑えられ、眠気が引き起こされやすくなり、睡眠を助ける効果があります。
メカニズム
オレキシン(またはヒポクレチン)は、覚醒を維持する役割を持つ神経伝達物質です。脳内でオレキシンは、オレキシン1受容体(OX1R)およびオレキシン2受容体(OX2R)という受容体に結合して働き、覚醒状態を維持します。オレキシン受容体拮抗薬はこれらの受容体をブロックすることによって、オレキシンの覚醒を促進する作用を抑え、自然な睡眠を誘発します。
具体的には、オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシン1および2受容体に結合し、その信号伝達を遮断することで、睡眠を促進し、覚醒状態からの移行を助けます。この作用により、特に夜間に眠りやすくなります。
副作用
オレキシン受容体拮抗薬は比較的安全な薬とされていますが、眠気や頭痛、めまい、口渇などの副作用が出ることもあります。長期使用しても問題ないとされています。
スボレキサント(suvorexant)
スボレキサント(商品名:ベルソムラ)は、オレキシン受容体拮抗薬の代表的な薬です。スボレキサントは、オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の両方に作用する薬です。
- 作用機序: スボレキサントは、オレキシン1およびオレキシン2受容体を競合的にブロックすることで、オレキシンの作用を抑えます。これにより、覚醒状態が抑制され、眠気が促進されます。
- 使用目的: 不眠症の治療に用いられ、特に入眠困難や睡眠維持の問題を持つ患者に効果があります。効果は比較的穏やかで、依存症のリスクが低いとされています。
- 副作用: 眠気、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感などがありますが、長期的な使用に関するデータは十分でないため、注意が必要です。
レンボレキサント(lemborexant)
レンボレキサント(商品名:デエビゴ)は、スボレキサントと同様にオレキシン受容体拮抗薬であり、オレキシン受容体1および2に作用します。しかし、スボレキサントと比べて、レンボレキサントは受容体に対する親和性や作用の持続時間にいくつかの違いがあります。
- 作用機序: レンボレキサントもオレキシン1および2受容体を競合的にブロックすることによって、オレキシンの働きを抑制し、眠気を引き起こします。スボレキサントと同様、眠りを助ける働きがあります。
- 使用目的: 不眠症の治療に使用され、特に入眠困難や夜間の目覚めに悩んでいる患者に効果的です。スボレキサントに似た作用を持ちながら、少し異なる薬理特性があります。
- 副作用: 眠気、頭痛、倦怠感、吐き気、めまいなどがありますが、依存性や乱用のリスクは低いとされています。
スボレキサントとレンボレキサントの違い
- 作用の持続時間:
- スボレキサントは比較的長時間作用する一方、レンボレキサントは作用がやや短く、速やかに効果が現れる特徴があります。
- 親和性の違い:
- 両薬剤はオレキシン1およびオレキシン2受容体に結合して作用しますが、レンボレキサントはスボレキサントと比べて、オレキシン2受容体に対する親和性がわずかに高いとされています。